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1979年8月 ロンドンにやってきた 9

空港の建物の外に出ると、舗装もされていないでこぼこの広場は土埃が舞い立ち、車のエンジンの音で騒がしかった。
私は他の人たちについて、前方に見える一風変わったバス???なぜ一風変わっているかというと、形は昔日本でも走っていた丸っこいバスなのだが、そのボディはトラック野朗一番星に出られるほどゴテゴテに飾られているからである???に向かって歩いてゆく。
どこからともなく、10歳前後の子供達が数人走り寄ってきて、シガレット!シガレット!と我々に話しかけてきた。
前を歩いていた西洋人の男性などは、彼らにしつこく付きまとわれ、片手を大きく縦に振って追い払っていた。
子供たちの名誉のために言うなら、私の目には彼らは決して強引ではなく、特に彼らに危機感を感じるようなことは何もなかった。

バスに乗り込むと、私は前から2-3列目の窓際席に着いた。
すると先ほどの子供達の一人が、私の座っているバスの窓の下まで近寄ってきて、シガレット!と言って多分パキスタン製らしきタバコを差し出した。
訳が分からず戸惑っているとその子供は、今度はチェンジ!チェンジ!と言って交換するジェスチャーをして見せる。
それを見ていた西洋人の男性は、私の後ろの窓から体を乗り出して子供にマルボロを一箱差し出し、その子は急いでタバコを交換すると走ってどこかにいってしまった。
私はその時の子供の逞しさに驚きを隠せなかった。
驚きと言えばもう一つ私がびっくりしたのは、パキスタンのバスの運転手であった。
数分後、運転手がバスに乗り込み、出発したのは良いのだがその運転の荒いこと!
バスの前に乗用車やリヤカーを引いた自転車等が近づくと急ブレーキ。
やり過ごすと異常なダッシュ力でスピードを回復。
警笛は走り始めてから止まるまでなりっぱなし。
こんな状態で、我々は前の座席の背もたれに渾身の力でしがみついていた。
続く



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